ハレーションを利用したオプアートの大家、リチャード・アヌスキウィッツ

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Radiant Green (1965)

(Radiant: 輝く、放射)

色鮮やかな図形が重ねられています。長く見ると目がチカチカしますね。作者は

リチャード・アヌスキウィッツ

(1930–2020)。オプアート界を牽引したアーティストです。

 

作品のほとんどは、色と図形の組み合わせによって起こる錯覚を研究したもので、本人は実験のようなものだと評しています。

それを踏まえて見てみると、まるでカラフルな試験管を見ている気分になりませんか?

 

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Plus Reversed (1960) 引用: http://www.op-art.co.uk/richard-anuszkiewicz/


色に重きを置いた作風は、イェール大学院で教師であったヨゼフ・アルバースの影響が強いと言われています。

 「正方形賛歌」という作品で、アルバースは隣に置く色による現象を実験しました。その現象のなかで補色の影響を追求したのがリチャード・アヌスキウィッツです。

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ヨゼフ・アルバース (1953)正方形賛歌: 「上昇」引用:  https://whitney.org/collection/works/4079

 

補色というのは色相環の中で反対側に位置する色のことです。(色相環ー色を順番に並べた円のこと)

補色を並べると、互いを引き立て合うかのように、両方がより鮮やかに見えるのです。

また、補色どうしは境界線か瞬いて見える、「ハレーション」という現象が起こります。これがチカチカの正体です。

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(1969) Orange Family 引用: https://www.artnet.com/auctions/artists/richard-anuszkiewicz/orange-family

調べる前は、こんなに多様な作品ばかり作ってなにが楽しいんだ…と思いましたが、


私は非常に機械的な図形からロマンティックなものを生み出すことに関心がある…図形や色は私にとっては、とてもきれいで純粋な、理想の遺跡のようなものだ。

(Dafoe, T., (May 26, 2020)(引用1)

と言っており、好奇心やロマンも追求していたようです。

無機質な線になぜか遊び心を感じるのはそのせいなのでしょう。

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リチャード・アヌスキウィッツ (1965) Christmas Star for the Museum of Modern Art 引用: https://vertufineart.com/artists/richard-anuszkiewicz/

(意訳: ニューヨーク近代美術館に贈るクリスマススター)

 

 

幾何学的な作品は単純に見えますが、補色と形の組み合わせによって違う効果が感じられ、そこが彼の作品の奥深さですね。

以上、リチャード・アヌスキウィッツの紹介でした。

 

 

参照

http://www.artnet.com/artists/josef-albers/

Dorothy C. Miller, ed. (1963). Americans, 1963 (PDF). Museum of Modern Art. p. 6.

 

引用1 原文

“I’m interested in making something romantic out of a very, very mechanistic geometry,” Anuskiewicz once said. “Geometry and color represent to me an idealized classical place that’s very clear and very pure.”

Dafoe, T., (May 26, 2020) https://news.artnet.com/art-world/richard-anuszkiewicz-obituary-1871100

 

どうでもいいことですが、最初Google翻訳の通りにアヌシキェヴィチで調べていたら全然出てこずアヌスキウィッツで調べると大量にヒットし、全部書き直しました。

名前の訳って大事ですね(笑)