ヴィクトール ヴァザルリ (Victor Vasarely) 1908–1997
は、いち早く錯覚を利用した制作を始め、オプ・アートの父とまで呼ばれている人物です。
経歴 仕事もアートも
商業学校、絵画学校に通い、卒業後も経理事務をしながらデザインの仕事をしていました。
1929年、バウハウスという芸術運動を研究する「ムヘイ※」に参加し、機能主義に刺激を受けます。
※ムヘイ: Műhely。ハンガリー語でワークショップ
1930年代はソ連構成主義の影響も受けながら、オプ・アートの作品の制作も始めました。(下に紹介する「シマウマ」など)
この頃パリで出会ったパトロン、ドゥニズ・ルネはアブストラクト界の女王とも呼ばれた画商で、積極的に制作するきっかけとなりました。
ヴィクトル・ヴァザルリ(1937)シマウマ
画像引用元: https://news.masterworksfineart .com/2017/12/19/victor
-vasarely-zebra-1937-setting-the-course-of-optical-art-in-the-20th-century
二頭の境界線はシマ模様のズレによってのみ表現されています。
形は描かれていないのに、ニ頭の姿勢や動きまでわかりますよね。
オプ・アートの旗手へ
1944年、パリ郊外にアトリエを持ちます。その頃から目の錯覚も積極的に取り入れ始めました。
1964年、タイム誌がオプ・アートという言葉を定義し、
1965年にはMoMA (NY近代美術館)が、「感応するまなざし(Responsive Eye)」展を開きます。
ヴァザルリは参加者のなかでも早くからオプ・アートの制作を始めており、その先駆者として広く知られるようになりました。
※「感応するまなざし」展ー オプ・アート作品を展示した。オプアートにも応用される理論を説いた「配色の設計」(1963)の著者ヨゼフ・アルバースも参加。
ヴァザルリの作品
Vega-Nor, 1969 画像引用元:https://www.albrightknox.org/artworks/k196929-vega-nor
平面の円が球体のように見えます。丸の大きさだけでなく、
暖色が接近して見えることを利用し、中心だけ鮮やかに塗ることで立体感を加えています。
ヴァザルリはこの作品について
「この構図は宇宙の膨張と縮小を表すー自然の偉大なる無限性の極限である」
“this composition expresses the extension, the expansion of the Universe: the extreme of the great infinities of Nature.”
と語りました。
タイトルに夏の大三角に輝く0等星 (1等星よりも明るい) ベガが選ばれたのも納得です。
オリオンーmc, 1964 画像引用元:http://www.artnet.com/artists/victor-vasarely/orion-mc-FyKnR1ADbT2Qm2QEhscrrQ2
オリオン座は1等星を2つも含む明るい星座です。ベガと対照的に冬の大三角形のひとつですね。
星ではなく星座の名前なのでコンセプトも少し違うのでしょう。
背景の色とのコントラストによって円の色が違って見え、明るい星と暗い星をもつオリオン座のコントラストを彷彿とさせます。
それぞれの円が惑星や銀河のように見えるのは考えすぎでしょうか
参照
MFA MASTERWORKS (n.d.) Victor Vasarely Zebra. https://news.masterworksfineart.com/2017/12/19/victor-vasarely-zebra-1937-setting-the-course-of-optical-art-in-the-20th-century
Albright-Knox (n.d)Vega-Nor. https://www.albrightknox.org/artworks/k196929-vega-nor
artnet (2021) Victor Vasarely. http://www.artnet.com/artists/victor-vasarely/orion-mc-FyKnR1ADbT2Qm2QEhscrrQ2