文化庁メディア芸術クリエイター育成支援
事業成果発表イベント「ENCOUNTERS」
は毎年映像や音声、イラストなど最新のメディアを使った若手クリエイターの作品が集う展示会。規模が拡大した今年はさらに注目が集まります!
さらに特別展ゾーンでは大物クリエイターによる展示も。電脳コイルで有名な磯光雄、イラストレーターのあけたらしろめさんの展示も見られます。
無料で入場できるのも嬉しいところ。
画像引用元: https://twitter.com/MediaArts_C
展示は
A. 今年採択されたクリエイター、
B.昨年の採択クリエイター、
C.特別展
の3ゾーンに分かれます。各ゾーン多数のクリエイターの展示がありますが、この記事ではそれぞれ3作家を選んで紹介します。展示を見るときの参考にしてください!
開催概要
イベント名: 令和5年度 文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業成果発表イベント
「ENCOUNTERS」
会期:2024年2月17日(土)- 2月25日(日)
時間:日〜木11:00am - 6:00pm(最入5:30pm)
金・土11:00am - 8:00pm(最入7:30pm)
場所:表参道ヒルズ本館
入場料:無料
文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業成果発表イベントとは?
文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業によって新しいメディア芸術の企画を募集し、技術支援や専門家のアドバイス、クリエイターの交流、制作費を支援します。これらのサポートによって企画の具体化が支えられ、その成果か発表されるのが「文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業成果発表イベント」です。
会場マップ
ZONE A 今年度採択クリエイター
顔認証と映像で自分の多様性と向き合える空間
題名: 『多様性の扉-顔認証と音の知覚による自己の探求-』
作家: 小原 開+柴田 莉紗子+丸山 翔哉
場所:ZONE A - 21
作品は映像と音声、顔画像認識技術を利用したインスタレーション。複数の音や映像の捉え方は体験者に自由に委ねられ、現代の多様性のなかにある自己と向き合う展示になっています。
今回のイベントに先駆けて渋谷駅近くのギャラリー、Room_412で展示されていました。
その時の展示の様子です。
一番目の映像作品を見て、簡単な質問に答えてから二番目の作品に進むのですが、自分の答えが全体の何割なのかが次々と表示され、他の観客と一緒に参加している感覚が面白かったです。
一番目の部屋:
二番目の部屋:
絶対これだ!と思った答えが意外と少数派だったり、自分の個性も多様性の一部だと実感できました。
小原開、柴田莉紗子は慶應義塾大学大学院在籍、丸山翔哉は慶應義塾大学SFC研究所所員。慶應と聞くとアートとはあまり関係なさそうですがお三方とも音響を中心にイベント企画やパフォーマンス、VR作品など積極的に活動されています。
VR空間でゴミを捨てる不思議な体験
題名: 『trash for you 「VR と現実空間の相互作用から生まれる相多層的な想像」』
作家: 高橋 祐亮
場所:ZONE A - 08
VRコンテンツとそのプレイによって生み出されるデータによって制作された展示。
「ゴミを捨てる」という行為に着目し、作者の自宅が再現されています。
プレイヤーがVR空間でゴミを捨てるとゴミ捨て場のレンダリング画像やその行為によって聞こえたはずの音が生成されます。
高橋 祐亮:
1992年生まれ。慶應義塾大学大学卒業、東京藝術大学大学院修了。主にVRコンテンツやCGI、インスタレーションを制作。CREATIVE HACK AWARD 2017特別賞、NEWVIEW AWARD 2022 Grand Prize受賞。
画像引用元: https://creators.j-mediaarts.jp/project/trash-for-you
海で完成しない美術館を建設するゲーム
題名: 「海の美術館」
作家: 布施琳太郎
場所:ZONE A - 13
海上美術館の「終わることのない建設作業」の完成を目指すTRPGゲームです。
ル・コルビュジエが考案した、螺旋状に増築し続けられる完成しない美術館建築からアイデアを得ていますが、ロールプレイの要素もあるゲームです。
画像引用元: artovilla.jp
※この画像は別の個展『新しい死体』の写真で、『海の美術館』の写真ではありません。
ZONE B 過年度採択クリエイター
ZONE Bには過年度(2022年)に採択されたクリエイターの作品が展示されます。
TwitterとAIが生みだすポエム
題名:『バズの囁き』GengoRaw
作家: 石橋 友地 +新倉健人
場所: ZONE B - A
画像引用元: https://awrd.com
SNS上で大量の投稿を行う人が増え、それは時に大きな注目を集めて「バズ」ることがあります。しかし、バズすらも大半がすぐに忘れ去られてしまい、過去のものとなります。
この作品はTwitter(現X)のトレンドワードを素材として、AIが詩を作成し続けるインスタレーションです。
コトバを発信する我々とそのデータから客観的に統計をとるAIが衝突し、現在のメディアとコトバの関係性を浮き彫りにします。
縁日の風景と記憶が混ざり合うアニメーション
題名:「飯縄緑日」
作家: 榊原 澄人
場所: ZONE B - B
榊原澄人の作品「飯縄縁日」は、長野県飯山市飯綱町を舞台に、縁日の光景と作家の記憶を組み合わせた作品。風景画のような背景にgifのようなユニットが配置されています。人々はお面を被り、妖怪が闊歩しているようにも見えます。長野県立美術館のアートプロジェクトの一環として制作された作品でもあります。また、地名の「飯綱」は、頂上の砂が食べることができたという伝説が残っています。
https://twitter.com/naganoartmuseum/status/1382649909472493573?s=21
映画監督吉開菜央の特集上映」
題名: 「吉開菜央 特集上映」
作家: 吉開 菜央
場所: ZONE B - D
画像引用元: naoyoshigai.com
※画像は「吉開菜央特集:Dancing Films」の写真。本展で上映されるかどうかは不明です。
吉開菜央『ほったまるびより』の監督、ロッテルダム映画祭IFFR2022に選出、カンヌ監督週間2019に招待されるなど注目の映画監督であり、振付師、ダンサーでもあります。吉開菜央が監督した作品が特集上映されます。
ZONE C 特別展示
Cの特別展示は吹き抜け階段横のスペースで、B3Fから3Fまで各階に展示されます。
かわいいイラストで描かれる地球の未来
題名:「シロとメロの世界図絵」
作家: あけたらしろめ
場所: ZONE C - 5
画像引用元: https://www.sirome.net/
必要最低限とも言えるほどシンプルな線で素朴なかわいらしいイラストを描く作家。
シロとメロははるか未来の地球に暮らす双子で、何でも自在に作ることができる材料『魔法のタネ』で道具や家具を作って暮らしています。
シロとメロの絵を見ていると未来の地球の暮らしはどんなものか、想像がふくらみます。
電脳と現実が交差するSFアニメ「電脳コイル」
題名: 「電脳コイル」
作家: 磯光雄
場所: ZONE C - 6
画像引用元: prtimes.jp
「電脳コイル」は磯光雄監督のもと2007年に放送されたアニメ。
電脳世界と現実を重ねて見ることができる「電脳メガネ」が普及した近未来を舞台に、小学生たちの日常を描いた作品です。警察のようなマスコット「サッチー」を相手に電脳ビームを打ったり、電脳ペットを飼ったり、近未来の描写にワクワクさせられるアニメです。今ではARメガネやロボットのペットなど、類似したものが作られているのも感慨深いですね。
絶滅動物が来る百貨店の漫画
題名:「北極百貨店のコンシェルジュさん」
作家: 西村ツチ
場所: ZONE C - 7
画像引用元: https://ebookjapan.yahoo.co.jp/special/article/aa0048.html
「北極百貨店のコンシェルジュさん」は動物のお客様のための百貨店が舞台の漫画です。新人コンシェルジュとして働く主人公のもとに来るお客様はなんと全員「絶滅種」の動物。人間味のある個性豊かなお客様が可愛くて頑張るヒロインを応援したくなる漫画です。第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました。
会場内のイベント
2月17日、25日には参加クリエイターによるワークショップやトークが開催されます。せっかく行くならイベントに合わせて行くのも楽しそうですね。
①オーディオゲームを作るワークショップ
「『AUDIO AR GAME MAKER』でオーディオゲームをつくって遊ぼう!」
オーディオゲームセンタープロジェクトを続けている「DDD Project」によるワークショップ。2019年に採択され、視覚を使わないゲームの開発に取り組んでいます。
画像引用元: https://gamemakers.jp/
日時:2月17日(土)4:00pm - 6:00pm
講師:DDD Project(犬飼博士、浦田泰河、筧康明、加藤秀幸、田中みゆき、野澤幸男)
定員:10名 ※事前申込制・先着順。
場所:「ENCOUNTERS」会場内イベントスペース
参加申し込み:https://forms.gle/6AceFEoJbNshG2mw9
② 菅野創:デモンストレーション&トーク
メディアアーティスト菅野創によるイベント。菅野創は2019年度に故・塚田有那との共同企画で採択・作品発表。当時発表したのは『Lasermice bicolor + conference』は技術の進化を時代背景を考えながら辿る作品でした。
画像引用元: https://creators.j-mediaarts.jp/project/
日時:2月25日(日) 3:00pm - 4:00pm
定員:20名 ※事前申込制・先着順。
場所:「ENCOUNTERS」会場内イベントスペース