ロブ・ゴンサルヴェスはマジカルリアリズムの画家。
普通の風景に見せかけてとんでもない現象が起こる夢の世界を描き、空想の世界へと導いてくれます。
ロブ・ゴンサルヴェス(制作年不明) “The Sun Sets Sail” (直訳: 日が沈む航海)
経歴
ロブ・ゴンサルヴェス(1959-2017)
子供の頃から空想と、それを絵に描くのが好きでした。
社会人になってからはフルタイムで建築家として働くかたわら、トロンプルイユの壁画や劇場セットを描いたりしていましたが、絵ほど想像力を要しないことに物足りなさを感じ始め、再び絵を描き始めたと言います。
画家に完全に転身したきっかけは1990年のトロント野外美術展で大好評を得てからで、1日を絵に費やすようになりました。2003年に出版された絵本「終わらない夜」は彼の絵に沿って作られました。こちらも大成功を収め、続編「真昼の夢」へと続きました。
日本語版: 終わらない夜…作:セーラ・L・トムソン、絵:ロブ・ゴンサルヴェス、訳:金原 瑞人(2005年08月)ほるぷ出版
画像引用元: https://m.barnesandnoble.com/w/imagine-a-night-rob-gonsalves/1103681596
シュールレアリスムの中に建築の影響が混じる作品を制作しているうち、画家マグリットを知りました。
夢の中だけでなく現実世界にも、だまし絵のような認識の錯覚によって魔法のような体験をする事がある、その現象に注目し、表現するヒントになったそうです。
ロブ・ゴンサルヴェス(制作年不明) "Aspiring Acrobats" (直訳: 野心ある曲芸師たち)
少ないトリックでも夢のような感覚
じつは描かれたものの中には、だまし絵のトリックがほとんど使われていないものも多いのです。
下の絵でも注視すると滝が踊り子へと変わりますが、白い服を着た人が滝の形に集ったシンプルなトリックです。水の模様や人に見えるとか遠近法が歪んでいるとか、トリックアーティストが使いそうな手法は見られません。
ロブ・ゴンサルヴェス(制作年不明) "Water Dancers" (直訳: 水の踊り子)
感性重視のトリック
これは画家本人も言っている通り、錯覚の技術よりも、見たときの驚きや感動を優先しているから。
そのためトリックはあまり仕掛けられていなくても、絵を見ていると夢の中にいるような感覚に陥ります。
彼は無意識を描くシュルレアリストではないのですが、絵の特徴だけで言えばマグリットやダリなどの絵に近いようです。
"私の作品のなかで使う錯視の技術は、 いささか直感的なやりかたで使っています。
私の使う装置は、おそらく中心的な関心が着視の創造そのものにあるようなアーティストの作品はどには科学的ではありません。私にとっては描かれる特別な主題とその情緒的な衝撃こそが重要なのです。" (セッケル, p.117)
参照: アル・セッケル(2008] 錯視芸術の巨匠たち - 世界のだまし絵作家20人の 傑作集 - pp115-pp.117
画像は全て以下サイトより引用:
https://www.heavymetal.com/news/15-paintings-by-rob-gonsalves-that-will-make-you-look-twice/