[画像1] マチュー・ハマーケルスによる不可能な三角形の作品
二次元上でしか存在しないはずの「不可能な三角形」の彫刻…
ハマーケルスの彫刻は不可能な図形を再現したもので、正面からは不可能な図形、角度を変えるとグニャグニャした彫刻が現れてきます。
正面の決まった角度から見ると太い柱でできた立方体に見えますが、作品の周りを歩くと、正面からは想像もできないグニャグニャと歪んだ形が現れるのです。
Mathieu Hamaekers, Impossible Diamond, 1984
不可能な立体を実現した作品は他のアーティストも作っているのですが、美しい色と曲線は、マチュー・ハマスケスならではの特徴です。
[画像3]
[画像4]
作: 建築家Ahmad Abas & 芸術家Brian McKay (1999) オーストラリア, パース市
エッシャーの作品が忘れられず
大工の父を持つ彼は、子供の頃から物を組み立てることに親しんでいました。作品には長年の経験で得た立体への理解が存分に発揮されています。彼がトリックアートに触れたのは17歳のときで、M.C.エッシャーの作品から刺激を受けました。その翌年、ゲントのビジュアル·コミュニケーション·デザイン学校に入ります。在学中から立体造形の才能を発揮していました。鏡とガラスの構造体で遠近法の実験をするなど、その頃には既に遠近法への深い理解が表れ、学校で作った作品が国の「線、 色、 形」 賞を受賞しました。
卒業後
デザイン学校卒業後はハマーケルスはルガノ国際大学に入りました。大学では自分の作品スタイルを意識し始め、コンセプチュアル・アートとミニマル・アートを意識するようになりました。それだけでなく、エッシャーの「不可能な三角形」が心に残っており、それをどうにか立体にできないか考え始めました。錯覚に惹かれても美意識は健在で、トリックだけでなく美しく見える作品を、という事も念頭にあったそうです。不可能な立体を最初に作ったのは、エッシャーの「物見の塔」をもとに制作したものでした。
[画像5]
Impossible Possibility (Painted wood and polyester, 1984)
[画像6]
M.C.エッシャー (1949) Beldevere (訳: 日本では物見の塔、見晴台、展望台などと呼ばれています)
その後数年の内に図形の性質についての学問、射影幾何学を追求し、立体造形にさらに磨きをかけました。
[画像7]
Mathieu Hamaekers, Geometrical Love, 1989
作品には色が塗られているだけで、模様などの要素は全く追加されていません。
彼自身も
「私の彫刻は最も純粋な意味から形を再現しており、世界の、よりよく、より美しい形の基本となるものかもしれない。」と言っている通り、
直線や図形…その作品のシンプルさは、ミニマルであるが故にその裏のコンセプトを強調しているのです。
[画像8]
マチュー・ハマーケルス(1995) 統一
3メートルの巨大な彫刻として再現された不可能な立体は「統一」と呼ばれ、彼が生まれたオプホーフェンの街中、彼のアトリエの近くに建てられています。
あまりに情報が少なくご存命なのか不安でしたが、故郷のオプホーフェンを拠点にまだまだご活躍されているようで安心しました。(オランダ語の”TV Limburg” という番組のサイト)
[画像9]
言語の壁は作品観賞には関係ありません。いつか日本でも展示があったら嬉しいですね!
参照
アル・セッケル(2008] 錯視芸術の巨匠たち - 世界のだまし絵作家20人の 傑作集 - pp.131〜pp.132
画像引用元リスト(いずれも2021年7月12日にアクセス)
画像1 https://im-possible.info/english/art/sculpture/hemaekers_unity.html
画像2 https://spaceandperspective.com/2013/02/22/masters-of-deception-part-ii/amp/
画像3, 4 https://www.illusionsindex.org/i/impossible-triangle
(作品情報: https://www.denmac.net.au/projects/urban-art/the-impossible-triangle)
画像6 https://www.fbs-osaka-kondolabo.net/post/belvedere
画像5 https://akashiaya.hatenadiary.jp/entry/2017/09/29/061806
画像7 https://spaceandperspective.com/2013/02/22/masters-of-deception-part-ii/amp/
画像8 http://www.anopticalillusion.com/2012/09/impossible-triangle-sculpture/
画像9 https://www.tvl.be/programmas/in-de-buurt-conceptkunst-van-mathieu-hamaekers-85312
タイトル不明の作品があり、申し訳ありません。英語サイト中心に様々なサイトを回りましたがタイトルなしで掲載しているものばかりでした。失礼な話ですね。