「絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。」はイムズ内のアートギャラリー、「三菱地所アルティアム」最後の展覧会です。
過去にアルティアムで展示した作家7人が集結。タイトルもそのひとり、最果タヒ氏の寄せた詩です。
アルティアムとは
1989年にイムズが開業した際、"ビルコンセプトである「情報受発信基地」のコンセプトを体現する中核施設として開設した現代アートギャラリー」" (吉田淳一氏展覧会あいさつ文より引用)
「アートのスタジアム」が由来。敷居が高いアートを気軽に楽しめるよう、ジャンルを超えて展示してきました。
- 鹿児島陸「鳥」
- 山内光枝「潮汐 2012 - 2021」
- 潘逸舟(はん いしゅ) 「Where are you now」
- 淺井裕介 「Following the last breath」
- 塩田千春「大陸を越えて」
- 津田直「やがて、鹿は人となる/ やがて、人は鹿となる」
- 最果タヒ「絶滅」
入ってすぐ右側に見えるのが
鹿児島陸「鳥」
模様がかわいらしいですね。
山内光枝「潮汐 2012 - 2021」
素潜りの名人たちに撮影を頼み、彼女たちが深呼吸している様子を撮影。
引用元:http://terueyamauchi.blogspot.com/2020/09/news.html
海のざわめきと、呼吸音が重なり合い、感染症が流行る今だからこそ、時に脅威となる「大自然」と「呼吸」のつながりが心に響きます。
潘逸舟(はん いしゅ) 「Where are you now」
左の部屋に入ると銀ピカに光る巨大テトラポットが!!
その下は荒れ狂う海!
銀ピカの正体は消波ブロックを覆う エマージェンシーシート。入ると荒波の音も聞こえて、自分も一緒に漂流してしまったような気分になりました。
壁にはリアルタイムで漂流する海を撮影していかのような動画も。
モノクロの画面で、うごめく波の中、テトラポットがフラフラ揺れ続けていました。
部屋の奥にも小型のテレビがありました。
人が写っているのですが、荒波の海の向こう物体(テトラポット?)があり、それに向かって進みながら荒波にのまれそうです。
淺井裕介 「Following the last breath」
イムズの建物に使われている、有田焼のタイルでできた作品。
これが最後の展示だと実感しますね。
たくさんの人を楽しませてきた建物の、クリーム色の壁や床が作品の主人公になっています。
展示場の外にまで作品があります。ぜひ探してみてください。
塩田千春「大陸を越えて」
赤い糸に繋がれた靴の大群。
展示する方は色んな人から募集したそうです。
中にはその靴の思い出が書かれたものも。
津田直「やがて、鹿は人となる/ やがて、人は鹿となる」
Eventually, Deer Become Men/ Men Become Deer #12
作品のインスピレーションとなった宮澤賢治の「鹿踊りのはじまり」にいての資料が置かれていたので要約しました。
鹿踊りのはじまり
嘉十という男が湯治のため山へ行き、道中団子を食べました。
そのうちの一つを置いて去ったのですが、しばらくして戻ると6頭の鹿が団子の周りで輪を描くようにして「話している」のが聞こえたのです。
鹿は一口ずつ団子を食べ、やがて踊り歌い始めました。
ずっと身を潜めていた嘉十は人と鹿の違いを忘れ、思わず一緒になって声を上げて飛び出していきますが、それを見た鹿は一目散に逃げてしまったのでした。
鹿に共感して共に歌おうとするところに、人と動物の垣根を超える、共生の精神が見える一方で、超えられない壁も感じさせる物語です。
その壁を超えた先に、
「やがて、鹿は人となる/ やがて、人は鹿となる」
これが実現した世界が待っているのでしょうか。
最果タヒ「絶滅」
「絶滅」には「恋」というロマンチックなワードと「絶滅」「死」という残酷な言葉が入り混じり、美しい最果タヒワールドが炸裂でした。
他の作家もそうでしたが、人間と自然、命終わりを連想させる作品でした。
画面にギリギリ入るかという字の大きさもインパクトがあり、展示させる「詩」は本とは違った面白さがあるなと感じました。
小さいスペースながらも大掛かりな作品が多く、現代的で面白かったです!
どの作品もイムズの建物や現在の時勢に関連していて、切ない気持ちになりました。
なんと入り口でポストカードが貰えました。金ピカできれいです。
夕方に行っても人が少なかく見やすかったです。
会場: イムズ8F アルティアム
2021年7月14日(水) − 8月31日(火)
10:00 - 20:00会期中休館日なし
アルコール消毒、傘立てもありました。
付近に御用の方はぜひ。
感染症対策を万全にしてくださいね。