伝統工芸、九谷焼で現代的な作品を…九谷塾とは何者だったのか

カブトムシ、ヤドカリ、クワガタ……日本の伝統工芸、九谷焼で表現される、繊細な生き物たち!

2008〜2018年まで活動した九谷焼職人のグループ「九谷塾」は挑戦的な作品を数々残しました。

 

日本を代表する陶磁器のひとつ、九谷焼

しかし繊細な色絵付けが最大の特徴とされる美しい磁器は窯元、絵付け職人と、それを仲介する問屋を必要とする分業制です。

工程の複雑さと高度さ故に、スピード重視の現代産業に追いつけなくなっていました。

それを悔やみ、どうにかして九谷焼を現代向けにプロデュースしようと立ち上げられたのが九谷塾、問屋と職人9人によるグループです (活動: 2008〜2018)。
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九谷塾とは
九谷塾は " 「今の時代に語りかけることができるモノ」そして 「350年続いてきた九谷焼の歴史を後世に継承することができるモノ」 を創造していくこと"
を使命に、現代人の心に響くクールジャパンな作品を数多く残しました。

九谷塾のメンバーだった方曰く、
”九谷塾のコンセプトは「素晴らしい九谷焼を作り出す」ではなく九谷焼を使って何か楽しいことができないかを考えるチーム(石川県民三代目、2012)” 

どおりで伝統工芸なのに遊び心満載で、見るだけで心が躍る作品なわけです。


ブログ筆者が九谷塾を知ったのは石川県東茶屋町の、ギャラリーエッジでした。
貴重な工芸品の並ぶ商品棚の中に美しいアルビノのカブトムシがいたのです。

f:id:artrat:20210709143950j:image(撮影者: artrat.hatenablog.com)

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(画像2)九谷塾 兜蟲 白盛唐草(WAZAHONPO-SKIP004)

見てくださいこの繊細さ、輝き。美しすぎませんか?

通販サイト内でも活動終了していますが、手に入れたい方はこちらで購入できますね!(私は無理です)

 

SKIPシリーズ

このカブトムシは、SKIPシリーズといって九谷塾の“SUPER KUTANI INSECT PROJECT”の一部でした。

この細かい形を数多く制作できたのは、11パーツに原型をもとに鋳込みといって、石膏型に液状の粘土を流し込む方法により実現しました。
角と胴体を作り、それを接合して手作業で調整したそうです。 参照: 九谷塾 (2008-2012)兜蟲 鍬型 https://www.kutanijuku.com/work/skip/kabuto03/ 

九谷塾はカブトムシだけでなく、クワガタやヤドカリ、もっと繊細な形のカマキリ、タカラトミーとコラボしたチョロQなど、想像を超えるレパートリーの作品を生み出しました。

 

鍬型(クワガタ)

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(画像3) 鍬型 金森 市松

こちらのクワガタは型起こしと言って、”粘土のタタラを土型や石膏型などに押し当てて成形する技法” で作られました。(Setopedia)

九谷塾 (2008-2012)兜蟲 鍬型 https://www.kutanijuku.com/work/skip/kuwagata04/

 [2021年7月9日にアクセス]

Setopedia (n.d.) 型起こし https://setopedia.seto-guide.jp/glossary/%E5%9E%8B%E8%B5%B7%E3%81%93%E3%81%97/

 

 

チョロQ

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(画像4)

タカラトミーチョロQをタレントの所ジョージ氏のボディデザインのもとで九谷焼lバージョンを制作。

 

 

蟷螂(カマキリ)

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(画像5) 
格好良!!!!!!!!
繊細で滑らかなボディに輝く和風の色絵付け、格好良すぎます。活動終了されているのが本当に悔やまれますね。


このシリーズは高岡銅器という、鋳物の伝統工芸とのコラボレーション。この繊細さは金属工芸によって実現しているのですね!メタリックさが九谷焼の格好良さをますます輝かせています。

 

やどかり

九谷塾作品金沢工芸

(画像6)

実はやどかりシリーズの殻はもともと、かたつむりシリーズの殻でした。しかし兜蟲に続きサンフランシスコで発表したカタツムリは久谷塾HP曰く”惨敗”。

それでも諦めず、カタツムリの一部を生かす方法としてヤドカリが生まれたのです。

このシリーズは点や線がより繊細に描かれていて、近代九谷寄りの作風です。細かさが渦巻きのおおらかな丸い形を豪奢に引き立てています。

 

伝々蟲(デンデンムシ)
残念な結果に終わってしまったというカタツムリ
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(画像7)
なんて美しさ…。惨敗なんて信じられますか?
このシンプルな生き物でも繊細な触覚、足の肉感が再現されていてリアルですよね。こんな美しいカタツムリが歩いていたら…なんて想像してしまいます。 

 

 

参照

石川県民三代目(2012年2月16日)カブト虫になりました♪ https://wazahonpo.com/%e3%82%ab%e3%83%96%e3%83%88%e3%83%a0%e3%82%b7%e3%81%ab%e3%81%aa%e3%82%8a%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f%e2%99%aa/ 

 [2021年7月9日にアクセス]

石川デザインセンター(2010) 九谷三百五十年のDNAを継承 http://www.design-ishikawa.jp/gallery/22/003.html [2021年7月9日にアクセス]

九谷塾 (2008-2012)兜蟲 鍬型 https://www.kutanijuku.com/work/skip/kabuto03/ 

 [2021年7月9日にアクセス]

九谷塾(2008-2012)九谷塾とは https://www.kutanijuku.com/about/ [2021年7月9日にアクセス]

九谷塾(2008-2012)九谷塾の作品 https://www.kutanijuku.com/work/ 

 [2021年7月9日にアクセス]

 

 

画像引用元

画像1 九谷塾(2008-2012)九谷塾とは https://www.kutanijuku.com/about/ [2021年7月9日にアクセス]

画像2 和座本舗(n.d.) https://www.wazahonpo.jp/smp/item/WAZAHONPO-SKIP004.html [2021年7月9日にアクセス]

画像3 九谷塾 (2008-2012)兜蟲 鍬型 https://www.kutanijuku.com/work/skip/kuwagata04/ [2021年7月9日にアクセス]

画像4 金沢経済新聞(2010年8月6日)九谷焼チョロQ-九谷塾がタカラトミー所ジョージさんとタイアップhttps://kanazawa.keizai.biz/headline/1074/ [2021年7月9日にアクセス]

画像5 九谷塾(2008-2012)九谷塾の作品 https://www.kutanijuku.com/work/ [2021年7月9日にアクセス]

画像6 九谷塾(2008-2012)やどかり https://www.kutanijuku.com/work/yadokari/ [2021年7月9日にアクセス]

画像7 いつかどこかで(2011年5月11日)九谷塾 のギャラリー http://hidehidetyan.blog39.fc2.com/blog-entry-139.html [2021年7月9日にアクセス]