サイコロなどを使ったモザイク画や、密度の違う文字を並べて絵を描くアスキー(ASCII)アートを活用するアーティスト、
ケン・ノールトンの紹介です。
ケン・ノールトン(1999) アルバート・アインシュタイン
アインシュタインの写真?かと思いきや、その白黒はすべて、999個のサイコロの目によるもの!
経歴
ケン・ノールトンはコーネル大学で物理工学の学位を取得し、MITで情報科学の博士号を取得しました。
ベル研究所のコンピュータ科学部門に勤め、
動画制作に必要なグラフィックシステムの開発にも携わったそうです。
始めたきっかけ
始めたきっかけはアート関連ではなく、友人に仕掛けたイタズラだったというから驚きです。友人のオフィスを訪れた際、彼がいない隙にベル研究所の壁一面に、他の友人と一緒に電子部品で女性のヌードを描いたのです。しかし、そこで問題が起こりました。遠く離れたら女性に見えるジョークの効いたそれは、多くの研究所内の人々の目にもついてしまったのです。さらに他の観客の目につく前にと撤去されましたが、それでも縮小された絵は研究所内で広がり続けました。ついに広報課に呼び出され、ベル研究所と女性ヌードのイメージを結びつけてはならないと注意を受けてしまいます。
https://www.jeffreythompson.org/blog/2010/03/02/first-nude-in-the-ny-times-is-new-media-art/
レオン・ハーモン&ケン・ノールトン(1966)知覚の研究#1
コンピュータで制作した壁画
※電子部品で作ったものはすぐ撤去されたため、写真のものはおそらく別のバージョン。
ヌード大逆転
しかし、その後番狂わせが起こりました。
「1967年にニューヨーク・タイムズがその写真を掲載したのです。広報課は再び話し合い、この世界的な高級紙に取り上げられたのなら、そのイメージは低俗なものではなく芸術としてみなすべきだ、と結論づけました。
それだけでなく、注意事項も
「あなたたちは、もうそれを配布したり展示してもかまわない。ただ人々には、ぜひ、それがベル研究所で作られたことを知らせてください」
と修正されました。
この女性ヌードから始まり、作品のモチーフは人物であることが多く、何かしら関連性のあるオブジェや模様を使ってモザイクアートやアンビグラムを作り出しました。
pcについて
コンピュータに精通し、作品制作のための自作のソフトウェアまで作った彼ですが、パソコンに頼りきりの制作は良しとしていません。
「私自身も含めてすべての人に言いたい助言は、もしコンピュータに助けを借りるのであれば、それは計画と実施の段階に於いてだということです。
重要なことは機械ではなく、芸術的な目的であると同時に、イメージについて、あるいは人間の知覚や体験について学んだり、 示されるものだということを心得ておいて欲しい。」
ケン・ノールトン(2003)ウィル・ショーツ(ニューヨーク・タイムズのクロスワード編集者)
ニューヨーク・タイムズのクロスワード編集者をクロスワードパズルで表現!
コンピュータの助けを借りているそうです。なんだかホッとしました。
🔴作品紹介
ケン・ノールトン(1986) 自由の女神(とラザラスの詩)
https://www.nps.gov/stli/learn/historyculture/colossus.htm
アメリカの象徴、自由の女神の台座を建てる際、寄附金を募るオークションがありました。そこに寄せられた、エマ・ラザラスの書いた詩の文字の陰影を調整し、遠くから見ると自由の女神の顔を浮かび上がらせています。
※自由の女神台座内に詩が彫られたプレートが飾られています。
ケン・ノールトン(1999) サミュエル・F・B・モールス
モールスコード(Morse Code) でできたモールス
ケン・ノールトン(1991) バズ・オルドリン(1969年のニール・アームストロングの写真より)
彼のwebサイト。素晴らしいモザイクアートがたくさん見られます。
http://www.knowltonmosaics.com/
pp.163-165