古典風なのに超現実的?!ボレマンスの新しい肖像画たち

ミヒャエル・ボレマンスはベルギー出身のアーティスト。

画家として絵を描き始めたのはなんと30代になってからだが、展示も多数開催しその評価を高めている。

全体的に中世、近世の肖像画に似ていて、塗り方は17世紀バロックの画家、ディエゴ・ベラスケスに倣っているそうだ。現実的な肖像画の雰囲気も纏っているにも関わらず、そのモチーフは異様で、見れば見るほど違和感が湧いてくる

 

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ミヒャエル・ボレマンス《天使》2013
Photo: Peter Cox
Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp

画像引用元:

https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1782

 

ハンナロール・ナッツ(Hannelore Knuts)がモデルになっていると言うピンクのドレスを着た人物は何となくファッション業界のコレクションのような雰囲気もある。しかし顔は腕の肌色と対照的に真っ黒。服装から女性だと思えば顔や腕はむしろ男性らしい…

ポーズも何もしておらず、直立して腕も下におろしたまま。何の表情も見えないため、まるで物体のような虚無すら感じるこのポーズは、彼が描く他の肖像画にも多用されているが、どれも物質感だけが強調され、人物がまるで静物のように表現される。

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ミヒャエル・ボレマンス《オートマト(I)》2008
Photo: Peter Cox
Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp

金沢21世紀美術館 | ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース|ダブル・サイレンス

女性、または少女にも見える人物が後ろ手さに手を組んでいる。座っている描写が見えないので直立しているかに見えるのだが実は、スカートから下がまるで彫刻のようにそこから下が描写されていないのだ。見えるのは真っ黒な影のみで、足がない女性を描いたのか?それとも彫刻のように本当は空洞なのでは…?とさまざまな推測を掻き立てる。こちらも静けさを感じさせる画面の中で明らかな非日常が出現している絵だ。

もともと彫刻にしてスカート部分のみ自動回転させる予定だったというこの作品は、後に同じ絵を別の角度から描いたような油彩《The Skirt》や、スカートから上だけの現実の少女が腕も目線も動かさずに、台の上をろくろのように回転し続けるビデオWeight》など、数作品に発展させた。違う媒体であるがどれも一貫して、人の物質性のみを抽出したかのようで同じ作品のような印象も受ける。

3:45-5:55の部分を鑑賞できるリンク→

https://vimeo.com/124253574?ref=em-share

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ミヒャエル・ボレマンス《Weight Weight 3.45-5.55 on Vimeo

35mmフィルムをビデオ投影
(カラー, 無音; 9:44 分.), LCDモニター、オークフレーム

参照: https://www.moma.org/collection/works/102888

 

artsy(作品販売サイト)でも、彼は歴史的な画家に影響を受けながらも伝統から逸脱した構図と興味深い物語性は明らかに現代的である、と評している[2] 通り、彼の作品は伝統的な描き方の中に新しさも内包していてユニークな現代アートだ。

 

紹介した二作品のように、ミヒャエル・ボレマンスの作品はリアルで静謐な描写でありながら、私たちに解釈を静かに問いかけるかのように、常にミステリアスな雰囲気を醸し出す。

非現実を敢えて現実のように描くことによって好奇心と想像を刺激し、描かれた人物への想像を掻き立ててくれる一方で、その違和感は複雑で予測できない現実世界そのものの側面をも捉えているのかもしれない。[1]

 

紹介した作品を含めミヒャエル・ボレマンスの作品がマーク・マンダースの作品とともに現在、金沢21世紀美術館で展示されています!


「ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース|ダブル・サイレンス」展

展示スケジュール

”期間:2020年9月19日(土) 〜2021年2月28日(日) 

10:00〜18:00(金・土曜日は10:00〜20:00)

会場:

金沢21世紀美術館 展示室7〜12・14

休場日:

毎週月曜日(11/23, 2021年1/11は開場), 11/24(火), 12/29(火)〜2021年1/1(金), 1/12(火)

料金:

観覧券[日付指定入場制]

一般    :1,000円(1,200円)

大学生   :600円(800円)

小中高生  :300円(400円)

65歳以上の方:1,000円(1,000円)

※( )内は当日券料金

※団体鑑賞予約対象外

予約券購入はこちら

https://webket.jp/pc/ticket/itemdetail?fc=00169&ac=0030&igc=0005

 ”[3]


入場券については、当日券もありますが予約券購入をお勧めするとの事です。コロナ対策を万全にするためにも予約券が良さそうですね。


※購入は見に行く前日23:59まで

※予約券は数量限定、払い戻し不可

金沢21世紀美術館の友の会会員(※有料)の方は混雑のない限りいつでも入場出来る。(友の会→https://www.kanazawa21.jp/tomonokai/ )

 

[2] https://www.artsy.net/artwork/michael-borremans-skirt-sculpture

[3] https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1782